学園怪談2 ~10年後の再会~
第67話 『ジロー物語』 語り手 石田紫乃

「さて、それじゃあ私の番だね。今回はみんなお待ちかね、紫乃ちゃんの感動系ストーリーだよ」
一体誰に向かって言っているのか、ピースサインをしながら微笑む紫乃さん。以前、徹さんと小松っちゃんも同じ事をやっていたような気がしたが、これはいったい?
「で、それは一体どんなもの何ですか?」
 私は先に話を進めるべく、質問を投げかけた。
「もう、せっかちなんだから。まあいいや。私がこれから話すのはね、飼い主のために尽くした動物……ワンちゃんの物語。
 紫乃さんはどこかウルウルとした瞳で語り始めた。

 ……。
私はね、子供の頃に犬を飼っていたんだ。え? 名前? う、絶対に笑わないって約束できる? じゃあ教えるね。……ペロ。
……あ! 笑わないって約束したでしょ~。ふんだ、いいもん、いいもん。子供の時につけた名前だったんだから仕方ないじゃん。
……と、昔話をするつもりじゃないんだから。あのね、私のお祖父ちゃんに子供の頃聞かされた話なんだけど。
 その昔、お祖父ちゃんが子供の頃、疎開先の近所に一郎さんっていう男の子がいたらしくてね、雪のように真っ白な大きな犬を飼っていたんだって。その犬は色の白さと一人っ子の一郎さんの弟分という意味合いも兼ねて『ジロー』と名づけられていたそうなの。
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