学園怪談2 ~10年後の再会~
 ……などなど、自分の書いた事に対して様々な反応が来る。単純に面白かった。普段は学校では自分の言葉で多くの人が注目するなんて事はまずない。それにそんな勇気だって持ち合わせてはいない。だから手軽にスリルを味わえる手段を選んだ。
 しかし、最近の掲示板は規制が厳しくなり、本当に他愛のない犯行予告はすぐにホームページの管理人に削除されてしまうようになった。H君は楽しみを失った。
「ダメなんだ。もっと大きな犯行予告じゃないと……」
 しかし、大きな犯行予告は当然だが危険もつきまとう。自分の普段使っているパソコンからでは危険すぎる。
 彼は自分の欲望を満たせずに、悶々とした日々を過ごした。
 ……しばらくして、彼は学校からの帰り道で携帯電話の落し物を拾った。
「お、まだ新しいじゃん。馬鹿だな~勿体ない」
 彼はその携帯電話を手にとって考えた。交番に届けるかどうか。それから……。
「よし。試してみるか」
 H君は鋼板を素通りして自宅へと帰った。
 ……。
 バタン。
 H君は玄関のドアを開けると、何も言わずに足早に二階への階段を上がった。
「ちょっと~、帰ったの? ただいまくらい言いなさい!」
 母親が台所からパタパタとスリッパの音を響かせて来たが、姿を見るよりも早くH君は自室へと引っ込んだ。
「さてさて……お、やった。ちゃんと繋がるじゃないか!」
 H君は手にした携帯で早速インターネットを試してみた。自分の携帯電話は少し前に取り上げられてしまった。使用料金よりも使用時間の長さに母親は憤慨し、父親が単身赴任ということもあってか、叱るよりも取り上げるという実力行使に出ていた。
「さあ、少し厳しい内容を書き込んでみるかな」
 H君は見知らぬ落とし主の携帯を使い、犯行予告を打ち込んでいった。
『明日の夜9時に新座駅で女子大生を刺します』
 ……この書き込みに、対する殺到は今までの書き込みの比ではなかった。
「す、すげえ、やっぱり具体的な書き込みは反応がいいや」
 連日のように通り魔事件が全国各地で起こっているせいか、反応は上々だった。
 H君は携帯をひと通り操作すると、黙ってベッドに横になった。
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