学園怪談2 ~10年後の再会~
 ……次の日。
「大変だよおお。お母さん!」
 リビングでテレビを見ていたH君の耳に、悲鳴に近い姉の声が玄関の方から聞こえた。ドタドタと物音をたてながら慌ただしくリビングに飛び込んでくる。
「どうしたの騒々しいわね」
 洗い物をしていた母親が、エプロンで手を拭きながら娘を迎えた。
「さっき、さっき新座駅で友達が刺されたの!」
 その言葉に、H君は飛び起きて姉をと母親を見た。
「刺されたって……誰が! あなたは大丈夫だったの! 怪我とかしてない!」
 突然の言葉に母親はクシャクシャ顔を歪めて娘を抱き締める。
「お母さん! 私は大丈夫。私じゃないから、安心して、離してよ」
 姉は取り乱す母親に事の真相を話した。
 H君は興味の無いふりをしながら聞き耳をたてた。内心は自分が予告した通りの犯行が起きてしまい、気が気ではなかった。ドクドクと心臓は普段の何倍もの速さで血液を送り始めていた。
『俺のせい? 俺のカキコミでどっかの馬鹿が実行しちゃったのか?』
 姉の友達が刺されたということだそうだが、姉も詳しく犯人の姿をみていなかったようで詳細は不明だ。しかし、友達の怪我が軽かったということ、また目撃者はほとんどいないということで大事件にはならなかったようだ。
「もしかして……」
 H君はその夜、例の携帯電話を開いてみると、メールが数件届いているのを確認した。
『予告をやめよ』『これ以上のイタズラは身を滅ぼすことになる』『警察に捕まるぞ』『犯人はお前を狙っている』
 誰からかはわからないが、同一人物からのメールが来ていた。
「ちっ、この携帯の持ち主は誰だか知らねえが、俺が実際に犯罪をしてるわけじゃねえんだ。最悪は捨てればいいだけだしな」
 H君は身元が割れない事に自信を取り戻し、メールを無視して次の犯行予告をネットに書き込んだ。
『次の金曜日。昼の12時に新座市役所に爆薬を仕掛けます』
 この書き込みにも、また数々な反応があった。もちろん制止を促す内容が多かったが、中には彼を応援をしてくれる内容もあり、それらは再びH君に火をつける結果となった。
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