学園怪談2 ~10年後の再会~
 ……。
 市役所で小さな爆発騒動があり、けが人が数名出た。そのうち一人が母親だった。母はトイレから出る際に、トイレのごみ箱に仕掛けられた爆発物の破裂による衝撃で、軽いやけどと打撲をして病院に運ばれたとのことだった。
「俺は、俺は何もしてないのに、一体だれが犯人なんだ?」
 湧き上がる恐怖。そして焦燥感。複雑な思いで問題の携帯電話のディスプレイを覗き込む。そして、H君は一件だけ入っているメールを見た。
『これが最後の警告だ。今ずぐに予告をやめて携帯を処分しろ』
 H君は背筋が凍った。もう何もかも自分の行動は筒抜けなのだ。しかし、敵の姿を見ることはできない。自分には見えないのに相手からは見える。こんなに恐ろしいことがあるだろうか? 
「俺は、俺は……こんな脅しには負けねえ!」
 そして、彼は最後の書き込みをした。
『今度の日曜日の夜、新座学園前で人を殺します』
 書き込みを終えたが、掲示板には誰からの反応もない。しばらく待ってみたが、掲示板には自分の書き込み以外だれからもレスポンスは来なかった。
「なんでだよ! なんで誰からも反応が無いんだよ! 人殺しだぞ、人殺し! 今までで一番すごいことをやるんだぞ俺は!」
 怒りにも似た激しい衝動が彼の体にどす黒く湧き上がる。
 ……その時。
 ピピピピ。
……携帯にメールの着信があった。
「メ、メールが……」
 H君は魅入られたようにメールを開封した。
『お前の犯行予告のせいで、お前の家族は次々と事件に巻き込まれていった。お前には責任をとってもらう。今度の日曜日に殺されるのは……お前だ。』
 H君は黙ったまま、震える手でメールを閉じだ。

 
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