学園怪談2 ~10年後の再会~
……。
「その後、H君は携帯についての全てを母親と姉に打ち明けた。そして、母親は息子から携帯を取り上げるとメールや掲示板の書き込みを全て削除し、息子には、自分のしたことを全てなかったことにするように言いつけた。そして、これからは絶対に掲示板への書き込みはしないことを約束させたんだ」
 淳さんの話に徹さんがため息をついた。
「はあ~、何、じゃあそのH君は諦めちゃった訳だ。チキンだね~、最後まで突っ走ればもっと面白い話になったろうに」
「ちょっと、不謹慎な事を言わないの徹」
 紫乃さんが徹さんを諭す。
「それにしても、H君の犯行予告を実際に行っていたのは誰だったんでしょうね。やはり携帯に何か呪いとかがかかっていたとか? それとも幽霊の仕業とか?」
 私の言葉に赤羽先生が笑い声をあげた。
「あはは、あなたも結構ニブイわね。犯人はもう決まってるじゃない。そんなに都合よく携帯が落ちてたり、爆発物が家族を巻き込んだりすると思う?」
 私はまだ納得いかない感じだったが、斎条さんは口に手を当てて驚いた表情をしている。
「そ、そうか全てはH君のお母さんとお姉さんが仕組んだことだったんですね」
 斎条さんの言葉に淳さんは頷いた。
「そう。つまりは『犯行予告』なんて危ない趣味に高じている息子を更生させるため、家族ぐるみで芝居をしていたのさ。H君はまんまとはめられて、姿の見えない敵の恐怖に怯えていた訳」
 驚きの事実だった。かなり手荒い治療だったが、H君は完全に更生したのだから成功と言えるのだろうが……。
「あれ、淳さん。これってつまり……怪談じゃないんじゃないですか?」
 ここで私は疑問に思った事を口に出した。
 すると、淳さんはニヤリと笑って言った。
「あ~確かにそうだね。でもま、H君にとっては現実とは思えない怖い体験をした訳だし、いいんじゃないの? こんな怪談話も」
淳さんにしては意外なセリフだった。
 こんなお茶目な一面は10年前には見せなかった。10年という歳月はやはり人を色々な方向へと変えていくのだと実感したエピソードだった。

残り18話

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