学園怪談2 ~10年後の再会~
 それについては八木沢はなかなか答えなかった。しばらく考えるかのようにしていたが、やがて言葉を選ぶようにゆっくりゆっくりと語りだした。
「基本はあ青色でみんな無害なんですが、特定の誰かに恨みを持っていたりすると……色が変化しますね。赤は最悪です。必ず人が死にます……まあ、僕も今までに2回しか見たことはありませんけど」
 一瞬、背筋が凍った気がした。『必ず人が死にます』という物騒なセリフを軽く口に出す八木沢を俺は本気で怖いと思った。
「じゃあ、僕はこれで失礼しますね。先輩は霊感がかなり高いように思うので、青は見えなくても赤は見えるかもしれません。もし、何か危ない雰囲気を感じたら必ず離れてくださいね。君子危うきに近寄らずですから。じゃあ、さようなら」
 八木沢は俺とは反対方向だ。正門を出てすぐに俺たちは別れた。
「なんか、さっきの八木沢の話のせいか怖いな」
 俺はいつになく背筋が寒く感じながら、帰り道を歩いた。
 ……今までに幽霊の色なんてものを気にしたことなんてなかった。八木沢が余計なことを言うせいで急に夜の帰り道の雰囲気が一変した気がする。
 遠くから犬の遠吠えが聞こえる。空き缶が風に吹かれて転がってくる。普段の何気ない景色が全て新しいペンキで塗り替えたようにさえ感じる。
「こ、こええな。何も出てこないよな。マジで」
 俺は赤い色なら見えるだろうと言われた事を思い出し、あたりに注意を配りながら歩いた。当然のごとく赤はおろか、緑すらも見ることはなかった。
 しばらく歩くうちに、あたりの人影が少ない公園通りに出た……その時だった。
「うわあああ!」
 突然! どこかで悲鳴が聞こえた。
「な、なにがあったんだ!」
 俺の心臓が握られたかのように、急に圧迫感を訴える。
「たた、助けて!」
 ここは街灯が少なく、夜になると人通りも稀になる場所だ。日が短くなると変質者も毎年現れるので今の時期は特に寂しい。しかしここを抜ければ住宅街に出られるので、幾らかの通行人はいる。
 声のした方を気に掛けながら歩くと、敷き詰められた砂利を慌てて走る音が聞こえる。もちろん恐怖が強く、早くその場を離れたかったけれど、俺の足は音のする方へと歩みを進めた。そして……。
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