学園怪談2 ~10年後の再会~
「……あ! 城之内! どうしたんだ!」
 暗い中でもはっきりとわかるジャージ姿。もちろん俺の高校指定のもので、目の前には先ほど自転車置き場で転んでいた城之内が、腰が抜けたようになりながら砂利の上を這ってくる。
「うああ、や、山崎先輩! たたた、助けて、ひ、ひ、人殺しが……」
 その言葉に城之内が逃げて来た方を見ると……一人の人間が立っていた。
「う! こ、これは!」
 包丁を持って眼鏡とマスクで顔を隠した人が立っていた。……人殺し。その言葉に俺は恐怖は覚えなかった。それでも目の前の光景に畏怖した俺の本当の原因は、その人影の周りを取り囲むように揺れる赤、赤、赤の色だった。
「く、くそ。赤はそんなに簡単には表れないはずだろう八木沢!」
 俺は背中に刺したバットケースから金属バットを取り出すと、城之内を庇うようにして目の前の通り魔と対峙した。
「うおおおおお!」
 しかし、戦闘になるかと思った矢先に物凄い咆哮をあげながら通り魔は反対方向へ走り去った。
「はあ、はあ、はあ」
 後には俺と城之内が残され、そこは何事もなかったかのように静寂を取り戻した。
 ……次の日。
「なるほど、それは合体ですね」
「合体?」
 俺は昨日の出来事を八木沢に話していた。すると、八木沢からは予想もしない返答が返ってきた。
「幽霊には赤や青以外にも黄色や、白といった感じで種類があるんです。一か所に赤い幽霊が集中して死人が出ないはずはないんで、恐らく先輩は何体かの幽霊の色が混ざって赤く見えたんでしょう。まあ、絵の具みたいなもんですね。事実その場では誰も死ななかったようですし、すぐに赤は見えなくなったんじゃないですか?」
 そう言えば、通り魔が去った後は城之内の介抱で忘れていたが、赤い色を見た記憶はない。
「まあ、たまたま通り魔が現れ、それに反応した幽霊たちが集まってしまい、結果として赤い色に見える幽霊の塊となってしまったんですね。もしも、純粋に赤い色だけでできた幽霊だったら……先輩たちは危なかったと思います」
 その言葉に、俺は『確実に死んでいましたよ』という比喩を感じ、八木沢に対して恐怖と怒りを同時に感じた。
 
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