学園怪談2 ~10年後の再会~
 キィ、キィ、キィ。
 三輪車の音が少しずつ窓際に近づいてくる。
「やっぱり、ミクよ! ミクなのよ! あなた、ミクを入れてあげて!」
 ママはカーテンを開けようと、パパにすがりついた。
「違う! あれは、ミクじゃない! ミクの姿形をした偽物だ! 幽霊だ! 俺たちを連れていこうとしてるんだ!」
 叫びながら、パパは分かった気がした。幸せな家族の中で自分だけが死んでしまったミクの悲しみが。なぜ自分だけが暗く、冷たい死の世界に行かなければならないのか。不公平だ。あまりにも不公平だ。だからパパとママも連れに来たのだ。
 ……カーテンの向こうにミクのシルエットが映し出された。よくはわからないが、影はおいでおいでをしているかのように見えた。
「待っててね、ミク! 今、今ここを開けてあげるから!」
「やめるんだ! ミクは死んだんだああああ!」
 大声でどなり散らし、パパはママを殴った。
「うう! ううううう。ゴメンネ。ゴメンネ、ミク、ううううう!」
 ママは泣き崩れた。娘を助けてやりたかったが、それが叶わない願いであることも十分感じていたのだ。
 ……ミクはしばらく窓の外でおいでおいでを繰り返していたが、やがて消えた。
「ゴメン、ゴメンなミク!」
 パパも声を上げて泣いた。
 ……それから3日ほど、ミクは家の周りをうろつくようになった。強引に侵入しようとはしてこないが、いつでもジッとこちらをみているかのような、そんな日々が続いた。
 それと同時に、今まで塞ぎこんでいたママに変化が見られた。以前の塞ぎ込んでいた表情が少しばかりの和らいできたように思える。
「じゃあ、行ってくる。今日は残業で遅くなるから先に寝ていてくれ」
「わかりました。いってらっしゃい」
 パパは心配していた。あれだけミク、ミクと泣いていたママが最近のミクの気配について何も言ってこない。もしかしたら……という嫌な予感を感じていた。今夜は残業で遅くなると言ったが、実は違う狙いがあった。
 
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