学園怪談2 ~10年後の再会~
 ……出る? 
「それはつまり……幽霊が?」
 俺の質問に店主は曖昧にうなずく。
「私はちっとも信じちゃいませんが、なぜかこの部屋だけに幽霊らしきものが現れるそうなんです。なんでも人のいない部屋から誰かが見ているような視線を感じると言うんです。私は、ただの気のせいじゃないか、風が窓でも揺らす音とかを勘違いしてるんじゃないかと思って何度も調べました。しかし、不審なものは何も見つからない。霊媒師を呼んで実際に供養の儀式も行いました。それでも、この部屋を借りた方は皆さん決まってひと月と持たずに出ていかれます。もう……私にはどうすることもできないのです。だから借り手をつけるためにも値段を下げざるを得なかったのです」
 ……店主の話を聞いた俺は二つ返事で契約をした。
 さて、引っ越しも済んで荷物を全て部屋に入れた初日、まだ整理しきれず積まれた無数のダンボールの横で、俺は毛布にくるまって寝た。三月とはいえ、まだまだ寒さの厳しい夜だったから今でも鮮明に覚えているよ。
 ……グググ、ウググ。
 夜中の3時くらいだったかな? 俺を突然の金縛りが襲った。
『疲れてるんだし、仕方ないか』
 素直にそう思ったよ。もともと金縛りなんて珍しくもないと思っていたし、引っ越しで疲れていたし、緊張もしてたから逆に普通かな……なんてね。
 まあ、金縛りは体が疲れて寝ていて、頭がはっきりと覚醒している状態だ。だから動けないだけで意識はしっかりとしているんだ……って科学的にも言われてるしね。俺は実際に霊感があるから、本当の霊的な金縛りも経験したことがあるからね、今回の金縛りに霊的なものは感じなかったよ。
 でも……。
 金縛りにあった俺の目には開けっ放しの押入れが映っていた。そして、その押入れの暗闇がユラユラと動いていたんだ!
 ……暗闇が動く? 変な表現だけれど、本当にそう表現するしかないんだ。暗闇の黒がユラユラと動く。でも、俺に霊的な感覚は伝わってこない。現実ではあり得ないことが目の前で起こっているはずなのに、何も感じない。もしかして俺は霊感が無くなってしまったのかとも思ったよ。 
 しばらく様子をうかがっていた俺だけど、気づいたら眠りに落ちてしまったようだ。明け方、まだカーテンもついてない窓から朝日が差し込み、俺の引っ越し二日目が始まった。
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