学園怪談2 ~10年後の再会~
『……お前は誰だ。日本の戦況はどうなった? 外はまだアメリカ軍の爆撃が続いている。この簡易防空壕も長くは持たない。くそっ! 援軍はまだか!』
 やはり。ここに残っているのは残留思念だ。しかも戦時中の兵士のもので、肉体は滅んでも精神が生きている。終戦になった事もを知らず、半世紀以上もこの地でひたすらに戦い続けてきたんだ。誰にも気づかれず、たった一人でどれだけ心細かったことだろう。
『俺の名前は能勢といいます。もう戦争が終わって50年以上の歳月が流れました。あなたのような勇敢な日本兵のみなさんのおかげで、日本は平和になりましたよ……』
 俺はできるだけ穏やかに、自分の思念を伝えた。
『……日本は負けたのか?』
『……はい。負けました……でも……』
『うそだ! 俺たちが負けるはずがない! デタラメを言うな! 俺たちは国のために戦い続けた。討ち死にはあっても的に……アメリカに白旗を上げたりなんかしない!』
 バヒュウウウウウ!
 一瞬にして、暗闇の揺れが激しくなり、取り付けたばかりの部屋のカーテンが揺れ始めた。
「しまった。説得は無理だっ……ぐはっ!」
 ドカアアン。
 俺は増幅した暗闇の力に弾かれ、強かに壁際へと吹き飛んだ。凝縮していて感じなかった冷気が大爆発を起こしたように大量に降りかかったのだ。
『負けるものか。俺たちが、負けるものか……』
 俺は先ほどまでの無害な思念を凶暴化させてしまった。後悔しても遅い。結局、戦争を知らない俺が何を言ったところで、彼の気持ちを何一つわかってやることなんて出来ないのだ。
 ……この時ばかりは、さすがの俺も死を覚悟したよ。でも、その時、救世主が現れたんだ。
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