学園怪談2 ~10年後の再会~
……ベランダに一人の影がドサッと落ちてきた。
「カギを開けろ!」
振り返って見ると、暗闇の中でも白とわかる白髪の男性が仁王立ちしていた。どうやら昼間に留守だった2階の住人らしい。
ガチャリ。
俺は頭を打っていて、放心に近い状態だったけど、なんとか最後の力を振り絞ってカギを開けた。
「……ひさしぶりだな。伊佐。」
『……武光伍長殿! 我らが、我らが日本軍が敗北したというのは本当なのでありますか?』
俺の目の前で、二人……人間は一人だが……の会話が交わされていた。
「お前はよくやった。でもな、戦争は終わった。日本は負けた。でもな、周りを見てみろ」
幽霊から武光伍長と呼ばれた白髪の男性の言葉と同時に、目の前に何人もの人影が浮かんだ。
『た、高木上等兵殿、中本、それに荒井……おまえたちも死んでいたのか……』
先ほどまで怒気を含んでいた霊気が徐々に和らいでいった。
「みんな、お前を迎えに来たんだ。どうだ伊佐。みんなの顔を見てみろ、負けたとはいえ、みんな立派に戦い、そして今の日本の平和を作り上げたんだ。いい顔をしてるだろ?」
その言葉に、もう零からの邪気は感じられなくなった。
『……俺たちの役目は、終わったんだな……』
パアアアア。
……そして、目の前が昼間のように眩しくなり、一瞬の激しい閃光の後、白髪の男性を残して霊たちは全員消えた。明らかに成仏したのが感じられた。
「キミ。大丈夫かね? 本当にありがとう」
「い、いえ。あ、ありがとうございます」
俺は自分で何も考えずに言葉を発していた。とにかく、全てが終わったのだ。
「伊佐は忠誠心の強い男でな。戦死してもなお、姿のない敵と頑なに戦い続けていた。私の呼び掛けには答えず、ずっと押入れの空間で漂い続けていたんだ。私はいつかキミのような一般人で、伊佐を引きずり出してくれる人が現れるのを待っていたんだ」
武光老人はいつの間にか泣いていた。
「……俺たちでも、今の戦争を知らない俺たちでも、伊佐さんや、他の方がたの尊い犠牲があって平和が成り立っている現実があることは、ちゃんと未来に伝えますよ」
俺の言葉に武光さんは黙ってお辞儀をしていた……。
「カギを開けろ!」
振り返って見ると、暗闇の中でも白とわかる白髪の男性が仁王立ちしていた。どうやら昼間に留守だった2階の住人らしい。
ガチャリ。
俺は頭を打っていて、放心に近い状態だったけど、なんとか最後の力を振り絞ってカギを開けた。
「……ひさしぶりだな。伊佐。」
『……武光伍長殿! 我らが、我らが日本軍が敗北したというのは本当なのでありますか?』
俺の目の前で、二人……人間は一人だが……の会話が交わされていた。
「お前はよくやった。でもな、戦争は終わった。日本は負けた。でもな、周りを見てみろ」
幽霊から武光伍長と呼ばれた白髪の男性の言葉と同時に、目の前に何人もの人影が浮かんだ。
『た、高木上等兵殿、中本、それに荒井……おまえたちも死んでいたのか……』
先ほどまで怒気を含んでいた霊気が徐々に和らいでいった。
「みんな、お前を迎えに来たんだ。どうだ伊佐。みんなの顔を見てみろ、負けたとはいえ、みんな立派に戦い、そして今の日本の平和を作り上げたんだ。いい顔をしてるだろ?」
その言葉に、もう零からの邪気は感じられなくなった。
『……俺たちの役目は、終わったんだな……』
パアアアア。
……そして、目の前が昼間のように眩しくなり、一瞬の激しい閃光の後、白髪の男性を残して霊たちは全員消えた。明らかに成仏したのが感じられた。
「キミ。大丈夫かね? 本当にありがとう」
「い、いえ。あ、ありがとうございます」
俺は自分で何も考えずに言葉を発していた。とにかく、全てが終わったのだ。
「伊佐は忠誠心の強い男でな。戦死してもなお、姿のない敵と頑なに戦い続けていた。私の呼び掛けには答えず、ずっと押入れの空間で漂い続けていたんだ。私はいつかキミのような一般人で、伊佐を引きずり出してくれる人が現れるのを待っていたんだ」
武光老人はいつの間にか泣いていた。
「……俺たちでも、今の戦争を知らない俺たちでも、伊佐さんや、他の方がたの尊い犠牲があって平和が成り立っている現実があることは、ちゃんと未来に伝えますよ」
俺の言葉に武光さんは黙ってお辞儀をしていた……。