学園怪談2 ~10年後の再会~
「……」
 私の目には普段の街並みが映るだけで、クマのように見えた謎の物体はありませんでした。
「今の……見間違い?」
 私は釈然としない何かを感じつつ、気のせいだと思い込むことにした。
 ……。
 でも、その日、友達との買い物、そしてカラオケをした帰りのことです。
「あちゃ~雨だね」
 お店を出たところ、小ぶりの雨になっていました。傘を二人とも持ち合わせておらず、どうせ夕立だからと軒先で雨宿りをしていました。
 目の前には大きな水たまりができていて、そこに私と友達の二人が映っています。
 ……!
 そこで、私は見つけました。
 ……今日の電車で見かけたクのような物体。明らかに今度は私の後ろの窓ガラスのところに顔を出しています。
 私は急いで後ろを振り返りましたが、そこには何も映っていません。
「あ……」
 雨粒が落ちるたびに波紋が広がる水溜りの中で、クマはジッと私のすぐ傍で佇んでいます。私は友達にはこの事は黙っていました。もう何度も霊体験をしてきた私にとって、この出来事が現実に起こり得ないものであることを理解するのに時間はかかりませんでした。しばらく何もせず、注意深く様子をうかがっていると、雨が上がってきたので、私たちはその場を立ち去りました。
 ……。
 その夜、私は友達ととったプリクラを整理していて気がつきました。
「このクマ……あのゴミ捨て場にいたクマだ」
 プリクラの私の肩の付近から、例のクマがひょっこり顔を出していました。そのクマの頬には十字傷。耳は半分切れていて目が取れかかっています。脇腹の綿は前よりももっと飛び出てしまったように思えました。
「クマちゃん……」
 私はプリクラに写るクマから悲壮感というか、哀愁のようなものを感じました。別に私に対して何かの恨みのような感情をもっている訳ではないようです。ただ、この子が訴えている内容を思い、不意に涙がこみ上げて来ました。
「大丈夫。最後は私が看取ってあげるね」
 その言葉に、わずかばかりですが、クマは笑ったように見えました。
 ボッ!
 すると突然、プリクラの中のクマは急に炎をあげて燃え上がりました。
 ……私は哀悼の意を胸に、クマの成仏を祈りました。
「次に生まれ変わっても、またたくさんの友達ができるといいね」
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