学園怪談2 ~10年後の再会~
……。
「クマちゃんは……寂しかったんですね。大事にされて何年も遊んでもらい役目を終えたんです。人間の事を犬や猫のペットのように慕っていたんだと思います。だから最後に捨てられて自分の最後が寂しかったんだと思います。別に恨んでいたりした訳ではないと思います。ただ、誰かに側にいてほしかったんだと思います」
 斎条さんは思い出したのか、切なそうに目を閉じた。
「そうですか……。きっとゴミ捨て場で斎条さんに拾ってもらって嬉しかったんですね。だから焼却される最後を斎条さんに見届けて欲しくて何度も登場したんですね、きっと」
 斎条さんは無言でうなずいた。
 ……九十九神という言葉を聞いたことがある。長年使い続けられた物には人間の心が宿るというものだったように記憶している。クマのヌイグルミには短い年月とはいえ、様々な思いの交錯があったに違いない。
 物が溢れている世の中、何か一つの物を使い続けるのは難しい時代なのかもしれない。だからこそ、短い期間でも物は大切に扱う必要があるのだろう。
 斎条さんのエピソードのクマから大切なメッセージを感じつつ、私は次なる怪談を聞くことにした。

残り12話

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