学園怪談2 ~10年後の再会~
 ……。
「……い! ……目……ませ! 大……夫か!」
 ……誰かが、私の肩を掴んで揺さぶっている。気持ちが悪い。このまま寝かせて欲しい。
 私の冷えた体に、吐き気と、不快感が一気に流れ込んでくる。
「うう……ん、あ……」
 うっすらと目を開けると、目の前には私を抱き起こす徹さんの姿があった。
 バチイイイイン!
「あいってぇぇぇぇ!」
 思わず私は目を見開き、徹さんに平手打ちを放っていた。
「さっきは! なんで助けてくれなかったんですか! 酷いですよ」
 私はポロポロと涙を流しつつ、徹さんを憎悪の目で睨みつけた……その途端。意識が一気に我に返った。
「何すんだよ~~。君が急に教室を飛び出して走りだしたから、慌てて追いかけたら玄関口で倒れてたんじゃないか。何かうわ言を言ってたし、どんどん体が冷たくなっていくから心配になって介抱してたのに」
「すす、すみません徹さん。なにか幻覚を見ていたみたいで、もう大丈夫です。すみませんでした」
 私は徹さんの頬に付いた手形を撫でつつ、謝った。
 ……私が見た幻覚。今になって振り返ってみると、新座学園の霊力が私の中だけで作り出した架空の妖怪を具現化したに違いない。遊び半分で自分の作り話を怪談に登場させた罪を私は償う形になったのだ。もしも、徹さんやみんなが助けてくれなかったら、本当に命を落としていたかもしれない。
 私はもう二度と軽はずみな気持ちで怪談をするまいと心に固く誓った。
「じゃあ、落ち着いたみたいだし、教室に戻ろうか」
 能勢さんの言葉で私は教室へと歩き出した。
 ……普段なら、作り話でも何でも、怪談は怖い話をした者勝ちのような遊びだ。それが、そんな遊びが何時から許されないものに変わったんだろう。私たちは自分たちの通ってきた、作り上げてきた道のりの長さを改めて実感した……。

残り9話

< 241 / 296 >

この作品をシェア

pagetop