学園怪談2 ~10年後の再会~
 しばらくは再び快適なドライブが続いた。地蔵様の件の後は簡単な怪談なんかもしながら話題は膨らんだ。
 俺もオカケンも単純に沈黙に耐えられない人間だった事がはっきりわかった。どっちも少々短気で、それでいて熱くなりやすい。だから盛り上がる時はトコトン盛り上がるし喧嘩をする時は殴り合いになりそうなくらいに激しい。だからこそ腐れ縁みたいにずるずる仲がいいのかもしれない。
「おい、大介。あそこ、誰かいるぞ!」
 前方で手を振る人影に気が付いたのはオカケンが先だった。
 ヘッドライトに照らし出されたのは、赤いワンピースを着た女性のようだ。
 俺はブレーキを踏みこみ、徐行して近づいた。
「おい、止まるのか? 怪しいぜこんな山奥で一人なんて」
「しかし、もう目の前に立たれてるし、今さら避けて通るのは轢く可能性もある。それにもしかしたら本当に困ってるのかもしれない」
 俺はオカケンに返事をした。オカケンが本気で車を止めるのが嫌じゃないのは分かっていた。ただ万が一の犯罪性について考えただけの事だ。
 車を女性に近づけるとパワーウインドを降ろす。
「……すいません、実は彼氏とトラブっちゃって車から降ろされちゃったんです。お願いします、どこでもいいので町まで乗せてくれませんか?」
 見ると、ウエーブがかった茶髪にグロスの光る唇が特徴的な美人タイプの女性だった。一見は軽そうにも見える。もしかしたらチャラチャラした男と付き合っていて、ドライブ中に口喧嘩でもしたのかもしれない。
「どうぞ、後ろに乗って下さい」
 俺の返事に安堵の表情を浮かべて、女性が後部座席へと滑りこんできた。
「その恰好じゃさみしかったでしょ」
 オカケンが後ろを振り返り声をかけた。
「ええ、少し」
 女性は赤いワンピースに白のコートを羽織ってはいたが、まだ春先の時期としては薄着だ。しかも山奥で深夜ともなれば外の気温は10度をきっている。朝までいたら凍死してしまうくらいに冷えるのではないかとも思われた。
「ひでえ彼氏だな。まあ安心しなよ、次の町に着いたら宿まで送るよ」
 何かよからぬ事を企んでそうに聞こえるが、女性は一向に気にしない様子で返事をしていた。
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