学園怪談2 ~10年後の再会~
「ねえ、遊ぼうよ。そうだ私が10数えるから、その間に逃げて。追いかけるから、行くよ~、い~ち、にい~、さ~ん」
 徹はそっと紫乃さんを学園長室の外へと誘導させる。
「徹! いいの? あの子を放っておいて、遊んで欲しいって言ってたじゃないの」
 紫乃の問いかけに応えず、徹はドアを閉める。
「ろ~く、し~ち、は~ち、きゅ……」
 そこでドアが閉まり、中の少女との隔たりが生まれた。
「あの少女が10を数えるまでに目の届く場所から離れる必要があるんだ。もしもその場に留まって、彼女に見つかったら大変な事になる……」
 徹は冷や汗を落としなが言った。
「大変な事って……?」
 徹はゆっくり紫乃さんの背中を押しながら学園長室を後にした。
「それは聞かない方がいい……お腹の子にも悪いから」
 その言葉だけで紫乃は目を閉じた。
「現代で考えられた架空の存在まで具現化するなんて……こりゃ、マジでやばいかもな」
 徹は紫乃と手をつなぐと、待ち合わせの場所へと戻り始めた。

 ……給食室前。
 大介と能勢は給食室の配膳用エレベータへと来ていた。
「おい能勢、ここはミステリーツアーの際に怪談で話したエレベーターじゃないか。ここにロザリオがあるっていうのか?」
 大介の言葉に能勢は黙って頷いた。
「大ちゃん頼みがある。3階に上がってくれないか? それで俺がロザリオを取り出すまでエレベーターを止めておいて欲しい」
 能勢の考えでは、エレベーターの昇降路の下にロザリオがあるというのだ。校舎で長いこと人目に着かない場所という事で考え付いたらしいが、さっきのツアーの怪談の際、最後に下向きのランプが光っていたのが能勢には気がかりだったらしい。
「……まるで、下向きのランプが指し示したように思えたんだ。『この下に何かあるぞ』って」
 能勢の言葉に大介は力強く頷くと、給食室から大きな鉄製の調理用ヘラを何本か持ち出した。
「死ぬなよ、能勢!」
「大丈夫! 任せてくれ」
 二人は腕を組むとそれぞれの配置に着いた。
能勢が配膳用のエレベーターを始動させ、3階へと送る。
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