優子の恋



「んん…ちょっと、みんないいかな?」

坂本部長は咳払いをして
立ち上がった。

「今日ももうすぐ終わりだが少しだけ話がある…」

みんなの視線は
坂本部長に集まった。

「えーと、まず…今日で私はこの会社を辞めます……」
社内は驚きでどよめいていた

「理由は…その……責任を取るため…のようなものだ」

坂本部長はいつも
オロオロしていた
少し頼りの無い部長だけど
部下のことをいつも
大事に考えてくれていて
部下のミスでも
一緒に頭を下げてくれる
そんな部長をみんな慕っている。


私もそんな部長が大好きで
涙が溢れてきた


「その…実は…高橋ミユキくんと……結婚することになりました」


私は驚きで何も言えなくなった
周りのみんなもそうだった

ミユキちゃんは
涙を流して部長の傍へ歩み寄った


「ここに、私たちの子供がいます」

坂本部長は
ミユキちゃんの
お腹に手をあてていた。


「申し訳ありません」

部長は私たちの前で
土下座した。


「生半可な気持ちで結婚を決意した訳じゃありません…二人を守りたいんです」

いつものオドオドとした
坂本部長じゃなかった
一人の男性として
父親として立派な姿だった。



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