優子の恋
「麦茶でいい?」
「うん、ありがと…」
氷の入ったグラスを部長の前に置いた。
「どうしたの?」
部長は俯いたまま顔をあげない
「ミミって覚えてる?」
「もちろん!元気にしてる?」
ミミとは私たちが付き合いだした時に近所で拾った白い子猫
別れた時、ミミは部長に引き取られた。
「ミミが…もう一週間も帰って来てない……」
「え?そうなの?」
「どうしよう…きっと、どこかで……」
「言ったらダメ…明日、一緒に探しに行こう」
頷く部長の目は涙がいっぱい貯まって潤んでいた。
私は思わず抱きしめて頭を撫でた。
「ユウコ…」
「大丈夫ですよ、部長」
「……前みたいに名前で呼んでよ」
「え?……か…海人…」
名前で呼ぶと昔の気持ちが甦ってくる気がした。
嬉しそうに笑う海人の顔を見てると胸がどうしても苦しくなる
「ユウコ…」
「なに?」
「俺、まだお前が好きだよ」
「うん…」
「ユウコも居なくなって、ミミも居なくなって…一人になって、寂しくなって…それからずっとユウコのこと考えてた……会いたくてたまらなくなった…好きだ、好きだ…」
海人は私の胸に顔を押し当てて肩を震わせている
こんなに弱ったこの人を見るのは初めてで…
私の気持ちはどんどん海人の方へ傾いていった。
「私も…貴方の傍にいたい…」
「え?」
驚いた顔で私を見上げる
子犬の様な顔が愛しく思った。
「海人の傍にいたい…」