クリスマスホラー特別企画
男『……おい、なんだよコレ』
さおり『……?』
さおりも携帯を覗き込む。そこには……
男『墓地って……』
ここは結構駐車場の広いトイレ。近くに公園らしきものもあり、土地的にはかなり大きな施設のハズ。
しかし、頭に名前も記されていない『墓地』とだけの表示が、男の目を見開かせ硬直させた。
男『あ!オイ!』
いきなり携帯の画面は突然消え、慌てて電源を押し続けても全く甦らない。
男『何なんだよ……何なんだよ』
男はようやくハッとし。事態に気付き始めた。
先程のさおりが、何かをハッキリ言わなかった理由……
今の自分もハッキリ言いたくない。
言ってしまうと……何か……
男『あ、あはは~大変だ……そうだね大変だ~…』
独り言を言うように、小声でブツブツと声を出す。
怖さを紛らわす為に。
さおり『もう出ようよここ……』
男『そ、そうだな』
言われて初めて感じた。
暖房器具もないのに、この異様な生暖かさ。そして、誰も居ないハズのトイレに『誰かいる感じ』を……
動けない……
金縛りとかではない。
動こうと思えば、全然問題なく動ける。
そうじゃない。
よくは分からないが、あまり音を立てる事を行いたくない。
例え振り向く時の、服の擦れるような微々たる音でも、極力立てたくない。
先程のさおりが、まさにその状態である。
男は勇気をふり出し、体を曲げて歩き出そうとする。
自分の着ている、乾いたダウンジャケットの擦れる音が体を曲げて鳴った瞬間。それは起こった。
コツッ……コツッ……コツッ……
トイレの外から足音が聞こえ、女子トイレの入り口付近で音が止んだ。
さおり『ひっ!?』
その見えぬ入り口向こうの何者かに対し、さおりは荒々しく後ずさりをする。
男も一緒にトイレの奥まで進み、ひたすら入り口を眺める。
男『オイ~なんだよ~!オイ~~!』
さおり『もうヤダ……グスっグスン』
男『泣くなって!運良きゃ、たまたまここに寄った人かもしれないじゃないか』
運が悪ければ何なのだろうか……
さおり『うう、ヒック。ヒック。ごめんなさい…ごめんなさい…』
恐怖のあまり、何度も何度も謝るさおり。
外の者は一向に入ってくる様子はない