クリスマスホラー特別企画

男『……おい、なんだよコレ』



さおり『……?』



さおりも携帯を覗き込む。そこには……



男『墓地って……』



ここは結構駐車場の広いトイレ。近くに公園らしきものもあり、土地的にはかなり大きな施設のハズ。



しかし、頭に名前も記されていない『墓地』とだけの表示が、男の目を見開かせ硬直させた。



男『あ!オイ!』



いきなり携帯の画面は突然消え、慌てて電源を押し続けても全く甦らない。



男『何なんだよ……何なんだよ』



男はようやくハッとし。事態に気付き始めた。



先程のさおりが、何かをハッキリ言わなかった理由……



今の自分もハッキリ言いたくない。



言ってしまうと……何か……



男『あ、あはは~大変だ……そうだね大変だ~…』



独り言を言うように、小声でブツブツと声を出す。



怖さを紛らわす為に。



さおり『もう出ようよここ……』



男『そ、そうだな』



言われて初めて感じた。



暖房器具もないのに、この異様な生暖かさ。そして、誰も居ないハズのトイレに『誰かいる感じ』を……



動けない……



金縛りとかではない。
動こうと思えば、全然問題なく動ける。



そうじゃない。



よくは分からないが、あまり音を立てる事を行いたくない。



例え振り向く時の、服の擦れるような微々たる音でも、極力立てたくない。



先程のさおりが、まさにその状態である。



男は勇気をふり出し、体を曲げて歩き出そうとする。



自分の着ている、乾いたダウンジャケットの擦れる音が体を曲げて鳴った瞬間。それは起こった。



コツッ……コツッ……コツッ……



トイレの外から足音が聞こえ、女子トイレの入り口付近で音が止んだ。



さおり『ひっ!?』



その見えぬ入り口向こうの何者かに対し、さおりは荒々しく後ずさりをする。



男も一緒にトイレの奥まで進み、ひたすら入り口を眺める。



男『オイ~なんだよ~!オイ~~!』



さおり『もうヤダ……グスっグスン』



男『泣くなって!運良きゃ、たまたまここに寄った人かもしれないじゃないか』



運が悪ければ何なのだろうか……



さおり『うう、ヒック。ヒック。ごめんなさい…ごめんなさい…』



恐怖のあまり、何度も何度も謝るさおり。



外の者は一向に入ってくる様子はない
< 3 / 6 >

この作品をシェア

pagetop