オレンジ
逆光ですぐには気づかなかったけど、こいつも泣いてた。
「一緒に登下校したいから、迎えに行ったの!」
こいつの泣き顔なんて、久しぶりに見たから。しかも号泣とか、レアだから。だから僕は何も言えなくなって、ただその手を握った。
ちょっと前までは、同じだった目線。今では僕の方が少し高い。
変わっていくことが怖かった。僕は変わっていくのに、二人の関係が変わらないことが不安だった。壊れてしまうくらいなら、壊してしまいたかった。少しずつ、距離を置いて。そうすれば、ちょっと悲しいくらいで済むから。
でも、やっぱり無理だ。
体は成長しても中身はまだみたいだ。
ずっと素直になれなかった。
素直になりたかったのになれなかった。
本当は僕も思っていたことがあった。それをどうしても聞けなかった。
「早く、言ってよ…」
「え?」
「僕も、そういう風になれたらな、って思ってた…。
幼馴染とかじゃなくて、友達、っていうか、なんていうか……」
互いに大切な存在に。
でもそんなこと言えるわけないから、恥ずかしくなって下を向くと、顔を両手で挟まれて上を向かせられた。
「ほんと、そういうとこ男らしくないよね…」
オレンジの背景と憎らしい笑顔のこいつは、冗談のようにマッチしていて、僕はつい見とれてしまったのだ。