愛を知る日まで




行為の最中はわりと大胆なのに、終わってしまうとスゴく恥ずかしがりやになるのは真陽の面白い所だと思う。



終わったあとも暑くていつまでも上半身裸でいた俺に、真陽は一生懸命目を逸らしながら服を着るよう促した。


「さっきまで裸でくっついてたクセに…」

俺がそうツッコむと、真陽は

「そーいうコト言わないでよー!!ソレとコレとは別なの!」

と顔を真っ赤にしながら言った。


面白い。なんか、からかいたくなっちゃうなぁ。


そう思いながらTシャツを着てると、独り言のようにボソリと真陽が呟いた。


「…柊くんて、結構筋肉あるよね…」



なんて事は無い、真陽はただ見たままを口にしただけだろうけど。


俺は一瞬、言葉に詰まった。




『ガキの頃から喧嘩ばっかしてたからな』


そう答えていいものか、心の中に躊躇が生まれる。


…真陽は、どこまで俺のコトを知ってるんだろう。

虐待の養護施設で育った事は、多分雉さん辺りには聞いてるだろうけど。


俺がガキの頃から喧嘩ばっかしてて、病院送りにするほど容赦なく相手を傷付けて、しまいにゃ狂犬だなんて呼ばれてた事。

真陽は知ってるんだろうか。



…もし、知らなかったとしたら…?



俺にどんな過去があっても、真陽がそれを理由に離れていく筈は無い。分かってる。信じてるんだ。でも。



「まあね。バイトで重いもんとか持つし。」


俺の口をついて出たのは、違う理由だった。



――この、目の前の優しいひとに


人を傷付けて暴力で切り開いた道を生きて来たコトを知られるのは、まだ少し怖いと


俺は自分の臆病さを知った。






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