愛を知る日まで
あの7月の夕方。
俺は思ったんだ。
真陽が手に入れば、この手に堕ちてくれればそれだけでいいって。
だって、それは真陽にとても大きな十字架を背負わせる事でもあったから。
それ以上の事を望むのは酷だと、彼女を追い詰めるだけだと分かってたから、俺は今まで我慢してきたんだ。
恋人と呼べなくてもいい。手を繋いで外を歩けなくてもいい。
熱く抱いたその背中が、別の男のもとへ帰っていくのさえも、俺は我慢して見送っていたんだ。
そうして、ひとりぼっちの夜には彼女が今誰と何をしているか必死に考えないようにして。
耐えていたんだ。ずっと、ずっと。
自分の命より大事なあのひとが
俺のものじゃないと云う現実に。
けど、もうイヤだ。
真陽が熱を出してから3日後の夕方。
ようやく少し回復した彼女から掛かってきた電話に、俺は一瞬の安堵のあと狂おしいほどの切なさを爆発させた。