愛を知る日まで
「…あっ…、」
言ってしまってから気付く自分の迂闊さに、一瞬で冷や汗が流れる。
「…っ、ごめん真陽!嘘だから!今の、嘘だから!」
慌てて発言を取り消す。
ダメだ、今の一言を真陽に考えさせちゃ。
選択させちゃ、ダメだ。
真陽は、俺の懇願を「考えさせて」と言った。
それはどちらかの手を選ぶ事を意味する。今の曖昧な三角関係ではなく、婚約者と別れて俺を選ぶか、あるいはその逆か。
そしてきっと、その手は…婚約者を離さない。
当たり前かもしれない。ただの恋人じゃない。結婚を約束した相手なんだ。
もう数ヵ月後に式だって予定していて簡単には後戻り出来ない。
そして何より…真陽が婚約者の事をやっぱり好きだって事を
俺は知っていた。
そうなれば、選択を迫った末の結果がどうなるかなんて火を見るより明らかだった。