愛を知る日まで
コトが済んで、いつまでも裸のままの俺と対称的に真陽は時計を気にしながら焦って服を着始めた。
「…もう帰っちゃうのか!?」
「うん、ゴメンね。来週の夜勤明けにはゆっくり出来るから。」
申し訳なさそうに真陽はそう言ったけど、どうして今夜は急いでるかは話さない。
…俺も聞きたくないけどさ。
まあ聞くまでもない。家で婚約者が待ってるに違いないんだから。
……悔しいな。帰したくない。
「やだ。もっと居て。」
ブラウスのボタンを留めている真陽の背中に抱きつきながら言ってみる。
案の定、真陽は眉毛を八の字に下げながらそれでも笑顔を作って俺に振り向いた。
「ゴメンね。後でメールするから、ね。」
『私もまだ居たい』と言ってくれたら、まだ俺の気持ちも少しは救われただろう。
けど、真陽はこんなとき子供を諭すような言い方をするんだ。
だから、俺ももっと駄々っ子のように訴える。
「やだ。帰したくない。ずっとここに居て。」
「柊くん…」
真陽が困ってる。分かってる。ゴメン。
でも、これから一人の夜を過ごす俺に、もうちょっとだけぬくもりを分けて。