愛を知る日まで
2 青の時代
それでも世界は俺を独りにする
俺の12年間に渡る地獄の日々はある日突然幕を閉じた。
養護施設を出た子供達が弁護士に相談し集団で訴訟を起こした事から終焉は始まった。
次々と明らかになっていく施設での虐待に、 役所が、警察が、マスコミが、国が、騒ぎ始めた。
世間の想像を越えた残虐な実態に、俺たちは とても可哀想がられ心配され手厚い保護を受けた。
全国から励ましの声とやらが届き、医者が心の傷を癒そうとカウンセリングを行い、優しくまともな大人のいる新しい施設へと移り住んだ。
---なにもかもが、今更だった。
俺は嘲笑した。なにもかもが遅すぎると。
今更平和な空間に投げ込まれ優しくされて。
それで俺にどうしろと言うんだ。
平穏に生きろと?大人を信頼しろと?友達を作れと?
勝手な事ぬかすんじゃねえよ。
あんたらがのほほんとしてる間、俺は殴られて血を流して憎んで恨んで独りぼっちだったんだ。
そしてそこで生き抜く心を作り上げたと云うのに。
今更それを捨てろだと。
ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな!!
…俺には
施設長の暴力より
俺の13年間を否定する『優しい大人』の方が
ずっとずっと残酷に思えた。