愛を知る日まで




“綜司さん”



それが誰だか分かった瞬間、俺の脳裏にある光景が過った。


それは、まだ真陽と付き合う前の事。


園にわざわざ車で真陽を迎えに来た男の顔を、俺は覚えていた。



やたらと背が高くて、なのに頼りなくて女みたいに線の細い奴で

そして余裕と幸せに満ちた表情の、最高にいけすかない男だった。



車から降りて、園から出てきた真陽の為に助手席のドアを開けてやったその一連の行動だけで、ソイツが俺に無い何もかもを持っている事が分かった。


たくさんの事を知っていて、たくさんの物を持っていて、なのに真陽まで持っている奴。


世の中が不公平なんて事はとっくに知っているけれど、ここまで差を付けられるなんて、俺はよっぽど神様とやらに嫌われてるんだなと思ったっけ。



その最高にいけすかない男。

俺と正反対の何もかも持っている男。



“綜司さん”



ああ、こんな胸糞悪いのは久しぶりだ。







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