愛を知る日まで
結局、その日のメニューは
冷やし中華ときんぴら…じゃなく牛蒡サラダになった。
美味いけど美味くない飯を食いながら、まだ機嫌の治らない俺は不貞腐れて言う。
「俺、もう一生きんぴら食わない。」
ガキだ。もはや八つ当たりだ。カッコ悪いの分かってる。でも止めらんない。
「…ゴメン…」
真陽が申し訳なさそうに呟く。
クソ、俺だって真陽にこんな顔させたいワケじゃないのに。
「…今度、真陽が初めて作る料理食わして。“そーし”が食ったコト無いヤツがいい。」
なんとなく顔を見れなくてイジけたまま言った台詞に、真陽がきょとんとしたまま頷いたのが分かった。
「う、うん。分かった。」
「肉がいい。あとトマト。」
「分かった、お肉とトマトね。あ、ハムもっと食べる?私のあげる。」
「食べる。」
俺は自分の皿を差し出して、真陽が自分の冷やし中華から譲ったハムを貰った。
「…さんきゅ。」
言って、小さく笑うと真陽の表情が安堵に綻んだ。