愛を知る日まで




真陽が頭を撫で続けてくれたおかげで、少し気持ちの治まった俺は強く抱きしめていた身体を解放してやった。


そして無言のまま彼女の手を握り園から離れるように帰り道を歩き出した。



「…淋しかった。」

「うん。」

「会いたかった。」

「うん。」

「真陽のバカ。」

「うん。」

「ちんちくりん。」

「うん。」


歩きながら小さく呟くように溢す俺の駄々を、真陽はただ優しく受けとめてくれた。



遊歩道の曲がり角まで来て、二人揃って足を停める。まっすぐ行けば真陽の帰り道、曲がれば俺のアパート、無言の選択肢だ。


俺は言葉の変わりに強く手を握る。


来て。

帰したくない。もっと一緒にいたい。


けれど真陽は困ったように微笑みながら両手で俺の手を包んだ。


「今日は家で婚約者が待ってるの。だから柊くんの所には寄れない、ごめんね。」





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