愛を知る日まで
「なんだよ、婚約者ばっかかまって!俺のコトはどうでもいいのかよ!」
思わずカッとなって責めてしまう。
こんなに淋しい想いさせて、なのにまだ俺を淋しくさせるのかよ。
ずるい。婚約者のヤツばっかり。そーしばっかりずるい。ずるい。
一人にすんなよ。俺のコトもっとかまえよ。ちくしょう、真陽のアホ。
けれど真陽は、感情の昂った俺とは逆に冷静な顔を崩さなかった。
そして、もう一度文句を言おうとした俺の顔をスッと手で包み…まるで当たり前のようにキスをしてきた。
「…!?」
すっかり薄暗くなったとはいえ、まだ人通りのある遊歩道で。
優しく、けれどとても深く、真陽は俺の唇を食んだ。
不意打ちと、なんとも言えないそのなめまかしさに身体の奥が熱くなっていく。
そして名残惜しそうに水音をたてて唇を離すと
「どうでも良くないよ。柊くんのコトとっても大事だよ。でも今日は、ね。帰らなくちゃいけないの。お願い、分かって?」
まるで小さな子供をあやすようにそう言った。