愛を知る日まで
…ずるい。
こんな、慈しむような顔と女の顔と両方見せて。
魅惑的過ぎる彼女にすっかり飲まれ、俺は赤くなった顔を俯かせてしまった。
「…なんだよ、子供扱いすんなよ…。」
精一杯の強がりを、目の前の冷静な彼女を睨みながら呟く。
なんだよ今日の真陽は。
ずるいよ。俺のコト全部分かってるみたいな顔して。
優しくしてくれたって、キスしてくれたって、どうせ一緒に居てくれないくせに。
俺なんて、どうせそーしより大事じゃ無いくせに。
「子供扱いなんてしてないよ、柊。」
戸惑いといじけた気持ちの俺に、ゆったりと微笑んだ真陽が掛けた言葉。
いじけた気持ちも何もかも吹き飛んで、心臓が大きく高鳴った。
―――柊。
そう呼んだ声の響きは、今までに聞いた事が無い凛とした音だった。
どうしてだろう。
初めて彼女と目線が重なった気がする。肩を並べた気がする。
誰にもそう呼ばれなくとも“恋人”として。
それは、もうこの手を彼女が離すことは絶対に無いと思わせる強さも含まれていて。