愛を知る日まで
紫色の空に星が浮かんで、車が途切れて静かになった道に微かに虫の声がする。
そっか。もう秋なんだ。
真陽と別れ一人で帰り道を歩きながら空を仰いだ。
―――…なんで急に『柊』なんて呼ぶようになったんだろう。
思い出してまた胸が高鳴る。
会えなかった間に真陽に何があったかなんて俺には分からない。けれど。
俺を『柊』と呼んだ彼女は、どこか強くなったようでどこか儚くなったようで。
何かが少し変わった気がする。
真陽が。俺たちの関係が。
それが、深く、脆いものだと俺が知るのは
このぬるい風が、もっともっと冷たくなる頃の話。
今はまだ
夏と冬を繋ぐ季節の入口。