愛を知る日まで
「もう帰るの?」
壁に掛かってるホワイトボードの今日の出勤欄から名前を消した俺を見て三島リエが驚きを含んだ顔で聞いてきた。
「ああ、他にやるコトもねーし。」
「えっ、ちょっと待ってよ。やるコトあるよ。リーフレットの綴じ込み手伝って行ってよ。」
帰るコトを阻止された俺は思わず苦い顔をする。
「勘弁しろよ。俺ただのボランティアなんだからコキ使うなって。それに昨日バイトが夜勤だったからねみーんだよ。」
そう言って大げさにかったるそうにして見せた俺に、三島リエは意外なコトを口にした。
「…真陽ちゃんの頼みだったら聞くクセに。」
ボソリと呟かれたその台詞に、俺は身体に細い電流を受けたような衝撃を覚え、気だるく下げていた肩を真っ直ぐに直した。
「…何言ってんだ、あんた。」
思わず低くなってしまった声に、三島リエが微かな怯えと安易な後悔を表情に浮かべた。