愛を知る日まで
ロッカールームで荷物を取って、玄関に向かったところで濱口さんと鉢合わせた。
「あら、柊くんもう帰るの?」
そう言った濱口さんの手には事務用品を買い込んだ買い物袋が。そうか、外に買い物に行ってたのか。
良かった。間一髪、三島リエと言い争ってるとこを見られずに済んだ。この人に知られるとまた五月蝿いからな。
俺はもう余計なことは言わず、ただ
「お疲れさまです。」
とだけ頭を下げて早足で玄関へと向かった。
部屋に帰りグッスリ眠ってから目が覚めて、俺は三島リエの事をちょっと考えた。
泣かせたのはマズかったかなぁ。
女を泣かせたなんて真陽が知ったら怒るかな。ヤバイな。黙っとこ。
アイツ、園長にチクるかな。俺がまだ真陽を好きだって。それもヤバイなぁ。また真陽を泣かせちゃう。
ああ、もう、メンドクセエなぁ、あの女。
俺はまたウンザリした気持ちになって、布団の上に寝そべりながら天井を仰いだ。
…けど。
俺なんかのコト好きになってくれたのは、ちょっと嬉しいかも。
「…真陽に言ったらヤキモチやくかな…」
なんだか自惚れた気分になった俺は少しだけいい気分になって、もう一度布団の上で目を閉じた。