愛を知る日まで
俺はその心地があまりにも良くてゆっくりと目を閉じてみた。
そして気付かれないようにそっと安堵のため息を溢す。
…良かった。嫌われなかった。
自分の生きてきた手段を後悔してるワケじゃない。生き抜くために必要な事だったのだから。けれど、それを受け入れてもらうのはまた別の話で。
…もし、幼い俺の側にこの人がいたのなら。
俺はきっと狂犬なんかにはならず、尻尾をよく振るワンコでいられたのかな。
温もりの心地好さに、つい、そんな事を思った。
「懐くけどちっとも言うコト聞かないワンコだね。お手もお座りもしない。」
俺の頭を撫でながら真陽はクスクスと笑ってそう言った。
その台詞を聞いて俺は腕から抜けるとパッと正面に向きニィッと笑ってやった。
「お手はしないけどちんち…ぅっぷ!」
最後まで言い切る前に顔面に枕を思いっきり押し付けられた。