愛を知る日まで
秋の空気が切なさに輪を掛けるから。
――“一緒に居たい”だけじゃない。
生活を共にして。いつか子を成して。
俺、この人の人生が全部、欲しいんだ――
きっとそんな風に考えてしまうんだ。
どうしようもない願いだと分かっている。
けど。狂おしい程のその切なさは目の前の彼女に伝染ってその瞳を涙で濡らした。
「…泣くな。」
「…ごめん…」
「…謝るな。」
「…うん…」
その切なる想いを叶えられない事に真陽が胸を痛めているなんて、もう充分過ぎるほど分かってる。
泣いた跡を残したまんまの顔で、真陽は帰っていった。
俺はアパートの外まで出てその後ろ姿を見送った。
泣き顔を見たせいか、小さな背中がいつもより弱々しく見える。
……俺の願いは、いつも真陽を苦しめるな。
空を大きく見上げながら考えた。
なんの打算も無い、ただ純粋な願いなのに。願うことすら許されないのか。
秋の高い空に、星が瞬いて見えて
やがてそれは、涙で滲んだ。