愛を知る日まで
人生に於いて、本当のチャンスなんてのはそうそうあるもんじゃない。
ましてや、自分が変われるチャンスなんてものは。
アパートに帰った俺は、ひとり部屋の中央に寝そべりながら雉さんのくれたパンフレットを眺めた。
隣県とは云え、その養護施設は東京と反対側の隅っこにあった。とてもここから毎日通える場所じゃない。
つまり…
少なくとも、三年間。俺はここから、真陽から離れなくてはならなくなる。
さすがに即答出来るものでも無かった。
けれど、今を逃したらこんなチャンスなかなかあるもんじゃない。
それに、その分だけ真陽を手に入れる可能性も失う事になる。
決めるしか無かった。
「…でも…三年…長いな…、休みの日とか会いに行けるかな…」
呟いて、ゴロリと寝返りをしたと同時に、テーブルに置いていた携帯が鳴った。