愛を知る日まで
愛してる
―――夢をみた。
俺に、両親がいた。
顔は分からなかったけど、ごく普通の子供を可愛がる親だった。
俺はちっちゃい頃からやんちゃなガキで両親の手を焼かせたりもしたけど、それでも親は俺を可愛がってくれて。
ガキ大将の俺には悪戯好きな友達も沢山いて楽しい毎日を送っていた。
そして成長した俺は福祉の大学に通う大学生になり、周りには相変わらず賑やかで気のいい友達がいっぱいだった。
そして、俺は実習のボランティアで行った福祉施設で、女に会った。
年上のくせにちんちくりんのチビで、ちょいどんくさくて、でもスゴくあったかい女で。
俺は、そいつに恋をした。
生まれてから一度も彼氏がいたことが無いと云うそのちんちくりんに、俺は告白をして、めでたくカップルになってやった。
優しくて、でもちょっと抜けてて、俺はそんな女が可愛くて可愛くて、うんと大事にした。
キスもえっちも、大切なそいつの初めてをもらった夜は俺は世界一の宝物を手にしたような気分になった。
二人で色んな所へ行った。遊園地もプールも旅行も、お祭りも。時々は二人の友達も一緒に交えて大盛り上がりした。
たまには喧嘩もしたけど、すぐ仲直りした。いつも我儘を言うのは俺だけど、泣かれてしまうとにべもなく謝った。
やがて俺は大学を卒業すると共にそいつにプロポーズをした。
俺の両親と、女の家族と、友達と、仲間と、沢山の人に祝福されて、俺達は生涯の伴侶になる事を誓い合った。
そして、子供が生まれ、俺たちは一緒に歳を重ね…人生を共にした。
ふんわりと霧が掛かる温かい空間の中で、俺は朧気に霞む女を抱きしめながら言ったんだ。
『愛してる』
その言葉に、女の瞳から涙が零れてスゥと落ちた瞬間
夢が、覚めた。