愛を知る日まで
「…なんだよ、離せよ。」
睨みながら言ってやったが、ガキは離すどころか今度は俺の身体にしがみついて来やがった。
勝手に人の懐に顔をうずめてウグウグとくぐもった泣き声をあげてる。
俺はもう一度うんざりと溜め息を吐いた。
「慰めて欲しいんなら他のヤツんとこ行けよ。俺はお前なんか知ったこっちゃねえんだよ。」
頭をグイと押し退けてやったがガキはそれでも頑なにしがみつき続けた。
ちっくしょう、鼻水まで垂らしやがって。着いちまったじゃねーかキタねえな。
ぶん殴って引き剥がしてやろうかと思ったけど、こんな時間に大声で泣かれても面倒なので止めておいた。
「すげームカつく…。」
3度目の溜め息と共に俺は観念してその場に座り込んだ。
--泣けるだけいいじゃねえか。
泣けるって事は希望があったって事だ。
無くなって悲しい居場所があったって事じゃねえか。
…俺にはそんなもん、あった事すら無いのに。
座り込んだ俺にしがみついたままグズグズと泣き続けるムカつく背中を睨みながら、俺はジンジン染みる目許を冷たいタオルで冷やし続けた。
静かで寒い夜が更けていくのを感じながら。