愛を知る日まで
真陽、怒るかな。
やっぱちょっとズルかったかな。
そんな不安を抱えながら、俺はぬくもり園に最後のボランティアに向かった。
ギリギリまで俺が発つ事を真陽に言わなかったのは、急に決めた事でバタバタしてたからってのは言い訳で。本音はやっぱり淋しいからだ。
予め言っておいてしんみりされるのも。引き留められても背中を押されても、やっぱり俺は淋しくなっちゃうだろう。
もし「行かないで」なんて言われて抱きしめられでもしたら、俺は素直にそれに従ってしまう自信がある。
だから、ギリギリまで言わなかった。
もう絶対、後戻りできなくしてから、あっさり出発を告げた方がいい。
さよならじゃないんだ。ちょっと行ってくるだけなんだ。
いい男になって真陽を迎えに来るために、ちょっとだけ。
だから、淋しくなんかないって自分に言い聞かせるため、俺は出発の2日前まで真陽に何も言わないままでいた。