愛を知る日まで




それから一週間経った頃だったか。


そのガキが親に迎えに来られて施設を出て行ったのは。




その日の夕方。

遊戯室で漫画を読んでた俺の元へそいつが息を切らせて駆けて来た。


「…なんだよお前。もう行くんじゃねえのかよ。」


チラ、とだけ目を向け再び漫画に戻そうとした時、そいつが俺の手をグイと握った。


なんだ、と思い目を丸くするとガキは俺の手にクシャリと何かを握らせ小声で「…ありがとう…」と呟いた。


そして振り向きもせず駆けて行き、そのまま廊下を曲がって姿は見えなくなった。



ポカンとする俺の手の中には


絆創膏が一枚、握らされていた。





…なんだよアイツ。めんどくせえガキだな。




俺は、ガキとその母親らしき大人が並んで施設の門から出ていくのを夕日の差し込む二階の窓から眺めながら



あんなめんどくせえガキ、二度とこんな所に来なきゃいい、と




思って…--


---……願って、いた。







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