愛を知る日まで
たった一人、誰かに受け入れてもらえただけで。
たった一人、心から誰かを好きになっただけで。
こんなにも世界は変わるんだ。
人生は、俺は、こんなにも満たされる事が出来るんだ。
…ほんっと、スゲーや。
なんなんだろうな、これ。
真陽がスゴいのかな。それとも恋の力ってヤツか?
そんな事を考えながら駅のホームを歩いてた俺の目に、一枚の映画のポスターが飛び込んできた。
別にどうって事ないありふれたポスターだったんだけど、そこにあったキャッチフレーズの一文字に、俺は思わず「ああ、そうか」とひとりごちた。
―――『愛』だ。
真陽へのこの狂おしくも温かい想いも
彼女を守りたいと強くなれた事も
自分を認める優しさを持てた事も
全てを受けとめて旅発つ勇気を持てたのも
みんなみんな『愛』なんだ。
「はははっ、愛かぁ。」
誰にも気付かれない小さな笑いを溢して、俺は照れ臭くなって赤くなった頬を手で覆いながら、ホームへ滑り込んで来た電車へと乗りこんだ。
――fin――