愛を知る日まで
どうして大人は子供を棄てるんだろう。
自分達で作ったクセに。
子供は生きていく場所を選べないのに。
今更そんなコトを考えたのは、俺もそれなりに“悩めるお年頃”ってヤツだったのかもしれない。今考えれば失笑モノだが。
俺みたいに生まれてすぐ手離されたのもいれば、ある日突然その手を離されたヤツもいる。
親を恋しがっているヤツ、恨んでいるヤツ、恐れているヤツ、事情は様々だ。
何も持たない自分を俺は不運だと思っていたけど、持っているヤツは持っているなりに苦労があるのだと。
今更俺は考えるようになっていた。
ある時
ここに預けられたばかりの小さいガキんちょが職員に押さえられながら「ママ、ママ」と鍵のかかった玄関のドアを叩いて泣いていた。
涙でグシャグシャの幼い顔には痛々しい青アザがいくつも見えた。
「帰るぅ!ママの所へ帰るぅ!」
そう叫び続ける声は泣き過ぎて掠れていた。
こんなのは珍しい光景じゃない。今までだってこんな風に諦めの悪いガキを俺は冷やかな目で見ていた。
けど
---そんなにまでなっても求める“母親”って、一体なんなんだよ
自分に無い感情を爆発させるそのガキを、俺は羨望と哀れみの目で見つめた。