愛を知る日まで
12月。
俺が生まれた季節。
そして俺が棄てられた季節。
裸にオムツだけの姿でおくるみに包まれた状態で俺は真冬の乳児院の前に棄てられていた。まだ生後10日も経ってなかったらしい。
置き手紙も何も無く、ただおくるみに『柊 shu』とだけ小さく書かれていたせいで俺の名前は『柊』になった。
今考えてみればそれが俺の名前だったのかも怪しい。『柊』ってヤツのお下がりのおくるみだったかも知れないじゃねえか。
もしそうなら俺は名前までお下がりってコトになる。笑えねえ話だよな全く。
そんな愛情の欠片さえ残すことの無かった俺の親は、一体なんで俺を産んだんだろうか。
ああイヤだ。
12月はどうしても俺の嫌な生い立ちを思い出させる。
学校帰りの通学路。街路樹はクリスマスの電飾に彩られ浮かれた人間がそれを見てはしゃいでいる。
仲の良さそうな親子が温かそうな手袋をした手を繋ぎながら幸せな笑顔を溢してイルミネーションを見ていた。
…俺や施設にいるヤツらと、この子供と
一体何が違うって言うんだ。
こんな風に笑うために必要なものってなんなんだ。
---中学生だった俺はまだ知らなかったんだ。
その親子の笑顔を作ってるモノも
施設の子供が失って泣き叫んでいたモノも
俺が一度も知った事のないソレも
それがみんな“愛”だってコトを。
間もなくきっと15歳になる俺は
まだ
愛を、知らない。