愛を知る日まで
3 動き出す歯車
刹那の平穏すらも許されねえなんて
高校生になった俺は、すぐにバイトを始めた。
施設にいてもどうせ時間をもて余すだけだし、それに俺は共用じゃない自分のゲーム機が欲しかった。
うちの施設はあまり大きくなく小学生~高校生まで棟が一緒だったせいで遊戯室のゲーム機は大抵、小中学生が占領していた。
さすがに高校生ががっついてガキの中で遊んでるのはみっともない。
趣味も友達も無い俺にとってゲームや漫画は退屈な時間を潰してくれるのに欠かせないモノだった。
そんなワケで手っ取り早く近所で募集してたコンビニへバイトの応募をしてみた。
履歴書の書き方が分からなくて恥をかいたけど、それでもコンビニの店長は「近くていいね」と言う理由だけで俺を雇ってくれた。
けれど
仕事って云うのは常識の集大成で、ましてやコンビニなんて接客が俺に向いてるはずもなく。
一週間が経つ頃、俺は限界を迎え辞めようと考えていた。
そんな時だった。
「柏原くんて彼女いないの?」
一緒のシフトに入ってた女が話し掛けてきた。
確かまだ二回しか顔を合わせたコトのない女だった。
いねーよ。そう答えようとして、一応先輩のコイツには敬語を使わないといけないと思い直した。
「いないです。」
ぎこちない敬語でそっけなく言ったにも関わらず、女は嬉しそうに笑って
「えーじゃあアタシと付き合わない?」
いとも簡単にそう言った。