愛を知る日まで
職員、特に施設長と呼ばれるおっさんによる暴力は、そこにいるガキ達に満遍なく振るわれていたが、中でも俺は特別に可愛がってもらっていた。
二言目には「生意気だ」と怒鳴られ、大人の容赦無い力で殴られていた。
まあジッサイ生意気なガキんちょだったけど。
暴力が支配する世界で生きる術は2つ。
尻尾を丸め従順な犬に成り下がるか、牙を剥いて噛み付き抗い続けるかだ。
俺は、後者を選んだ。
「まーた『生意気だ』かよ。それしかコトバ知らねえのかよ、オッサン。」
殴られて口に溜まった血を、襟首を掴んでいる施設長に向かってぺっと吐き掛けた。
施設長の顔がみるみる赤くなり、俺の目の前でその表情が不気味に歪んでいく。
「くせぇ顔近付けんじゃねえよ。」
目の前のゆでダコみたいな顔を思いっきり睨みながらそう吐き捨てた瞬間
もう片方の手で施設長が持っていた木刀の柄が俺の頭に降り下ろされ、俺は激痛と目眩の後に気を失った。