愛を知る日まで
「柊、久しぶりに会ったコトだし俺とつるまねえか?な、いいだろ、同じ養護施設出身の仲だしよお。」
蓮に肩を組まれながら俺は段々人気の無い所へ連れていかれる。後ろにはピッタリとチンピラがくっついてきたまま。
完全に人の目から離れた裏路地まで来て、俺は蓮の手を思いきり払い落とした。
「他人にヘラヘラへつらって生きてるからそんなどん底まで落ちちまうんだよ。ちっとはプライド持てよ。」
視点のあってないその目を睨みながら言うと、蓮は顔をひきつらせて一歩後ずさった。
俺は視線をそのままチンピラどもに移しながら尚も睨み付けて言った。
「…金か?それとも俺もクスリのオトモダチにしようってか?へっ、高校生食いモノにしてセコい商売してんじゃねえよオッサン。」
上着を脱ぎ捨てた俺にチンピラはニヤつきながら近付いてくる。
「さすが虐待施設育ちは根性が違うねえ。でも世の中にゃ虐待より恐いものが在るって教えてやるよ。」
「抜かせ。てめえこそ何も持ってねえヤツの恐さ思い知らせてやるよ。」
俺は片方の口角をあげた。
久々の喧嘩に血がたぎるのが、分かった。
失うものが無い。
死ぬコトだって恐くない。
「…クソガキが…!狂ってやがる…!」
気が付くとチンピラは血まみれだった。
一人は完全に気を失っていて、もう一人は俺に噛み千切られた耳を抑えて座り込んでいた。
俺も二人がかりで殴られて肋骨がやられてるのが分かった。頭からも血が流れ続けてる。
へたりこんでいる蓮を見下ろしながら
「忘れたのかよ。俺が暴力に育てられたガキだったってコト。」
そう吐き捨てた時、パトカーのサイレンが聞こえた。