愛を知る日まで
さらに、入院していたせいで勉強の遅れた俺はなかなか元の成績を取り戻せないでいた。
施設の学習支援だけでそれを補うのは難しく、個人の努力の限界を感じた俺は途端にやる気をなくしていた。
別に大学進学を目指していた訳じゃないし、留年さえしなければ別にいいやと。
俺はまた、未来をひとつ、あきらめた。
入院のせいで長期間休んでしまったバイトも当然クビになった。
さすがに金が途切れるのは困るのですぐに新しいバイトを探し、時給の良さと接客以外で選んで配送のアシスタントに応募した。金以外、なにも面白味のある仕事じゃなかった。
退屈で空虚でイライラする、毎日。
これから俺の人生はずっとこうなんだろうか。
俺は一生こんな日々を送らなくちゃいけないのか。
珍しく気が滅入っていた。わずかの間とは言え穏やかな日々を過ごしてしまったからだろうか。誰にも受け入れて貰えない、なんの喜びも無い毎日なんて慣れっこのはずだったのに 。
…生まれた時から
孤独は俺の日常だ。
嘆くな。抗え。
世界に拒絶されても、俺は生きるんだ。
そう自分に言い聞かせ唇を噛み締める。
この時の俺にはそうするしか無かった。それしか思い浮かばなかったんだ。
もしも、この時、素直に泣けていたら
誰か手を差し伸べてくれただろうか。
誰かにすがって泣きつくことが出来たら
抱きしめてもらえたんだろうか。
けれど
この頃の俺は泣く意味さえ知らなかったから。
流した哀しみを受け止めてもらえる心地好ささえ分からなかったから。
だから、独り唇を噛み締めて俯くことしか出来なかったんだ。