愛を知る日まで
4 春
どうかしてると自分でも思う
第一印象は
『春』だった。
「今日から正規スタッフとして働かせて頂きます、櫻井真陽です。宜しくお願いします。」
雉さんに紹介され、女はそう皆に挨拶をした。
そう言えば新年度から新卒の正規スタッフが一人増えるって雉さん言ってたな。今日からだったのか。
その時の俺にはさして興味の無い話だったので、関心も湧かず俺はただスタッフルームの後ろの方でボケッと突っ立っていた。
まだ若干眠い目でホワイトボードに書かれた『櫻井真陽』と書かれた名前を見て、なんだかおめでたい名前だな、とどうでもいい事を考えていた。
全然話を聞いてなかった俺は、突然雉さんに
「櫻井さんは初めて会うわね。柏原柊くん、18歳よ。この春からボランティアに来てくれるようになったの。」
と紹介されて、内心ちょっと慌てた。
さすがに意識が話の中心であるその女に向き、ちらりとその姿を視界に入れた。
…別段、美人では無い。おっぱいも大きくない。男としてそそられるモノは特に無い。
ただ。
その雰囲気はひたすらに柔かった。
雉さんの人に敵対心を抱かせない笑顔も凄いけど、この女はそれ以上だった。
そして、おめでたそうな名前と相まって
俺はその女と目が会った瞬間
『…春みたいだ』
とても自然に、そう思った。