愛を知る日まで
もしこれを失恋と呼ぶのなら、俺は何回彼女に失恋した事になるのだろう。
『真陽にはもう婚約者がいる』
そうやって自分の気持ちを凍てつかせても、真陽への想いはすぐに甦ってしまう。
毎晩、彼女に恋をして失恋をして。
ただただもどかしい時間だけが過ぎていく。
「柊くん、おはよう。」
俺の顔を見て言ってくれるその挨拶が嬉しい。
「柊くん凄いね。」
俺のする事を肯定して褒めてくれる一言が今日の一日を幸せにする。
「これはね、こうするといいみたい。」
俺が知らない事を嘲笑ったりせずに丁寧に教えてくれるその行為に、心から安心する。
「柊くん、いつもありがとう。」
たわいもない感謝の一言が、俺の居場所を作ってくれる。
今までこんな人はいなかった。
真陽。もう俺は貴女なしでは生きていけないんだ。