愛を知る日まで
恋って云うのは滑稽なもので、駄目だと分かっていながらも自分に都合の良い想像をしてしまう。
---真陽がこんなに俺に優しいのは、もしかしたら実は俺に気があるからなんじゃないか。
馬鹿げていると分かってても、彼女の笑顔に触れる度にそんな事が頭をよぎる。
本当は真陽は婚約者の事が好きじゃなくって、事情があって無理矢理に結婚の約束をさせられてるとか。
いや、そこまで都合良くなくても、婚約者とは別に俺に惹かれ始めてるとか…
恥ずかしいぐらい愚かな妄想で頭をいっぱいにしながら彼女に近付く日々。
「なあ、それ取って。」
「これ?はい。」
受け渡される瞬間に手が触れる。
それを全く嫌がる事の無い真陽の態度に、俺の中の期待が嫌でも高まっていく。
「ん?なに?どうかしたの?」
じっと見つめていた俺に気付いて掛けてくれたその微笑みに
---真陽は…俺を男として受け入れてくれるかも知れない
何故か根拠の無い自信が、沸き上がった。